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ワーケーションをキャズム理論に当てはめてみる
こんにちは。八ヶ岳にテレワーク移住している、たまさんです。このブログではワーケーションやテレワークについて書いていこうと思っています。
今回はキャズム理論を用いてワーケーション普及について考えてみたいと思います。キャズム理論は主にハイテク製品や新しいサービスが市場に普及していく時に用いるマーケティング理論です。普及の段階ごとに異なる顧客特性がある、というのが主なポイントです。ワーケーションも新しいトレンドなのでキャズム理論を当てはめて考えてみましょう。
理論そのものはここでは深く説明しません。Webで概要を説明しているサイトもありますがこちらの書籍を読んでもらうのが一番わかり易いでしょう。
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現時点のワーケーションはイノベーター層が主な対象
キャズム理論ではイノベーター層は全体の2.5%と言われています。ワーケーションの経験者は若干統計によりバラツキがありますが2021年時点で約3%と推定されますので、これはほぼ合致する値です。
イノベーターというのは先進性、新規性そのものに価値を覚える人たちです。サービスの完成度にはあまりこだわりません。自身で足りない部分を補うなど、その領域への愛情と理解を備えています。
リモートで働くことに慣れていて、場所が変わっても仕事の内容や品質があまり変わらない人たちです。仕事の生産性が変わらないならば、好きな場所で働いて、生活の品質(QOL)が高まる方が幸福だ、と考えています。試行錯誤も積極的に楽しんでいる層です。(もしくは場所を変えることで刺激を受け、生産性を高めよう、という考えもあります)
イノベーターは自身でワーケーション環境を創る人たち
イノベーターはワーケーションという新しいコト創りそのものを楽しんでいます。そのスタイルは様々です。
リゾートホテルで快適にテレワークを楽しみながら、余暇の時間に趣味を楽しむのが一般的です。例えば沖縄などのビーチリゾートや、北海道、長野などのスノーリゾートが挙げられます。
また都市部でも京都などの古都で文化を楽しむ人もいます。東京の高級ホテルでルームサービスや夜景を楽しむ人もいます。
宿泊施設もホテルに限りません。ADDressなどのシェアハウス型サブスクサービスで人的交流を楽しむ人。温泉旅館で文豪のようにこもる人。キャンピングカーで自由な旅をする人など様々です。
現時点ワーケーションは主にイノベーター層。ワーケーションという新しい価値を生み出すことそのものを楽しんでいる。
場所や旅のスタイルは様々ですが、共通しているのは「ワーケーション」という新しいムーブメントを楽しみながら創り出そうとしている点です。
アーリーアダプターの取り込むことが普及のカギ
キャズム理論ではイノベーター層に続く市場としてアーリーアダプター層が挙げられています。これは全体の約13.5%とされ、イノベーター層の2.5%と合わせると全体の約15%となります。
アーリーアダプターの特徴はサービスの詳細やメリットに敏感なことです。また、一般に「インフルエンサー」とか「オピニオンリーダー」と呼ばれる人たちもこの層に多いと言われています。
2021年3月に観光庁が行った調査によると、ワーケーションに「非常に興味がある」と回答しているのが約9%。また「興味がある」の回答を合わせると28.1%になります。この中から今後ワーケーションに踏み出していく人たちが出てくるでしょう。その層がアーリーアダプターと言えます。
インフルエンサーと呼ばれるのは主にこのアーリーアダプター層が多い。
アーリーアダプターはイノベーターよりも5倍以上市場が大きいものです。この層を取り込めるかどうか、が普及のカギと言えるでしょう。
アーリーアダプターの興味はイノベーターと異なる
イノベーターとアーリーアダプターはいずれも先進的顧客ですが興味が異なります。アーリーアダプターは詳細を気にし、メリット、すなわち実利を重視する、と言われています。
自身から積極的に情報を収集し、判断し、ある程度リスクも取って活動する点で行動はイノベーターに近いのですが実利を感じられるかどうかで判断します。
ワーケーションがアーリーアダプターへ受け入れられるためには彼らの興味を満たす必要があるのです。
ワーケーションはキャズムを超えるか?
アーリーアダプター層から更に次のアーリーマジョリティ層に普及が広がる間には死の谷(キャズム)とも呼ばれる大きな転換期がある、と言われています。この転換期を乗り越えた製品やサービスが本格的普及になります。
スマートフォンを例に取ってみましょう。最初はガジェット好きが飛びつき、徐々に普及してきました。今ではシニア層を含め8割を超える人がスマートフォンに移行しています。
アーリーマジョリティ層は約34%を占めると言われています。イノベーター層、アーリーアダプター層と合わせると約50%、市場の半数となります。ここまで普及するためにはキャズムを乗り越える必要があるのです。
ではワーケーションはキャズムを超えて一般に普及するのでしょうか?僕は残念ながらそれは短期的には難しいと考えています。
そもそもワーケーションに興味を持っている層が3割程度に留まります。ワーケーションの前提となるテレワークも35%程度の実施率です。ワーケーションがキャズムを超えるとしたら、それはテレワークが働き方の主流になった時でしょう。
アーリーアダプター層に拡大するために
それではアーリーアダプターが望むワーケーションの実利とはどんなものでしょうか?ここでは地域の魅力は対象から外します。沖縄が好き、京都が好き。地域に対する興味は人それぞれだからです。僕は次の3点ではないかと考えています。
- (自宅やオフィス同等以上の)快適なテレワーク環境
- 日中仕事ができる柔軟な利用時間
- リーズナブルな利用料金
各々を具体例を挙げて説明していきましょう。
快適なテレワーク向け仕事環境が必須
個人にとってワーケーションの価値は主に生活の品質(QOL)の向上と場所を変えることによる刺激です。業務そのものは在宅勤務と変わりません。そこで自宅と同等以上に充実した仕事環境が整っていることが重要になります。
2020年当時、急遽在宅勤務になったため自宅で仕事をする環境が整っていない人がほとんどでした。今では(少なくとも定常的にテレワークを行っている人は)多くの人が在宅勤務の環境を整えてきました。例えばオフィス用椅子を購入したり、外部モニターを用意したり。自宅でもオフィス同様に働けるようにしている人も増えています。
その中で劣悪なテレワーク環境でわざわざワーケーションを楽しもう、という人は限られるでしょう。仕事の品質に影響が出てしまいます。ワーケーションはあくまで場所を変えて働くことで新たな刺激を得たり、幸福感を高めることが目的です。業務品質が著しく悪くなっては意味がありません。
自宅と同等以上の快適なテレワーク環境をリゾート環境で楽しめること。それは利便性と幸福感の両立という「実利」を示すことができるでしょう。
ワーケーションでも日中は仕事の時間
ホテルや旅館の多くは15:00チェックイン、10:00(または11:00)チェックアウトという画一的な時間設定となっています。しかしワーケーションではこれがネックとなります。
ワーケーションと言っても日中はテレワークで働いています。資料作成やビデオ会議もあります。資料作成など会話を伴わない業務はカフェなどでも可能です。しかしビデオ会議はできれば個室を利用したいものです。人事的、営業的にあまり人に聞かれたくない場合は特にそうでしょう。
一部のビジネスホテルでは日中テレワークプランを提供しています。都市部のホテルが多いのですがこれらは選択肢になるでしょう。しかし旅館などはまだ画一的な施設が多くワーケーション拡大の最大の課題ともいえます。
地方でも最近はコワーキングスペースが増えてきました。快適なテレワーク環境が整っており積極的に活用したいものです。ただし人的交流を目的としたオープンスペースしかない施設も多いのでビデオ会議がある人は事前に確認が必要です。
オープンスペース中心のコワーキングスペースは人的交流が価値となるフリーランス職などを中心としたイノベーター層には有効ですが、一般企業に勤めているアーリーアダプター層に広げるために個室環境の整備が必要だと考えています。
リーズナブルな利用料金設定
アーリーアダプターは実利主義者です。リーズナブルな費用であることも重要な要素となるでしょう。
ここでのリーズナブルな費用、とは必ずしも激安である必要はありません。価値に対して妥当な費用であればよいのです。
例えば1泊2万円以上が当然なリゾート地でワーケーションをしている、とします。デイタイムプランで2万円(延泊と同等費用)かかるとなれば、割高感を覚えるでしょう。しかし1000円まで安くなくとも利用者は納得するでしょう。最初からデイタイム利用費用も含まれていれば、多少プレミアムな価格でもリーズナブルだと感じるかもしれません。
一方で1泊6000円程度のビジネスホテルに宿泊するならばデイタイムプランは2000円程度で抑えてほしいものです。もしくは個室ブースをカラオケボックス程度の費用で提供できるのも良いと思います。
リゾート地を訪れる場合と地方都市のビジネスホテルを利用する場合では最初から費用の期待値が異なります。単価絶対額そのものよりもリーズナブルな価格で付加価値を提供できるか?が重要だと考えています。
ワーケーション施設に関する情報についてはこちらの記事も参照にしてください。
アーリーアダプター層のワーケーションを失敗させない
アーリーアダプターはイノベーターよりも人口も多く、新しい層です。新たに経験するアーリーアダプターのワーケーションを失敗させないことが重要です。
アーリーアダプターは必ずしも自宅以外でのリモートワークに慣れているとは限りません。また「インフルエンサー」や「オピニオンリーダー」の立場となる可能性があるため、失敗体験がネガティブな発信となる可能性もあります。
そこで、彼らが失敗しないように意識できると良いでしょう。例えばケーブルや延長電源ケーブルの貸出なども考えられます。ちょっとした忘れ物でワーケーションを台無しにしないための小さな工夫があると良いと思います。
ワーケーションで求められる準備についてはこちらの記事も参照してみてください。
また先に記した利用者にとっての実利を充実させることでワーケーション人口を増やすことができると考えています。
その他ワーケーションに関する情報についてはこちらの記事も参照にしてください。